君がいればそれだけで。

情けない話だが、当時の俺はまだ幼かった事もあって助けてほしいと王女の後ろに隠れる事しか出来なかった。でも、王女はそんな俺を守ろうと両親を説得してくれたんだ。親は産んだだけで産まれた後はその子の人生なんだと、本気で死のうとしている時だけ手にかけなさいと。

「恋仲ではないのか?」

「そんな恐れ多い仲になれるわけ無いだろう」

ラズハルドの恋仲という問いかけに少しだけ舞い上がった俺がいた。自分でも分かっているんだ。王女を異性として愛してしまっていると。でも、だからこそそばにいたい。そばにいるために愛しているとは言えない。言ってしまえば距離を取られる事を知っているから。
愛しているからこそ、王女が愛する人と幸せになってほしいとも願っている。