「それで?彼はどんな印象だった?私には正直に言ってよー。」

「印象?」

二人で食後のコーヒーをゆっくり飲みながら話した。

「そーよ、ゆり香が思った感じはどうだった?」

「どうって言われても。」

「だからー、真面目そうで口数が少なくてとかあるでしょ。」

「写真とは別人だったと思う。」

「えー?それ本当ー?」

今日子は私の言葉に目を丸くしていた。

「だってあの写真では仏頂面で愛想もなさそうないかにも陰気な感じしかなくて。」

「ゆり香の言う通りよ。あの写真は履歴書やIDに使うようなダメな顔だったわね。実際もそうなのよ。」

「でも違ってて。」

「どう違ったの?」

「やっぱり別人だと思う。」

「はあー?ちょっとゆり香何言ってるのよ。あれは海老原仁といって本当にあの写真のままの辛気臭い男なのよ。実物もそうだったでしょ?」

「いいえ、実物は髪はボサボサで、フィールド系特有のワイルド感と責任感があって、リーダータイプで、でも面倒見も良さそうで、的確な言葉で話して、頼もしい雰囲気があった、と思うけど。」

「ひゃー!それ別人よ。同姓同名の。」

「私にはよくわからない。本当はどういう人なのか。」

「ゆり香、私が間違っていた。ごめん。あの男は完璧に二重人格かもね。」

「二重人格?」

今度は私が驚く番だ。

「ゆり香が言ったような人なら、社内で猫かぶってるのよ。」

「猫かぶって?」

「あの男はやめた方がいいわね。私がいいと思って紹介したけどー。」

「今日子、私もう一度会って話してみる。」

「えー、やめてよー、ゆり香に何かあったら私の責任よー。」

「大丈夫、今日子のせいにしないから。」

「ゆり香、言い出したら聞かないもんね、昔から。」

「やだ、今日子ったら。」

今日子とカフェの前で別れた。

午後は部屋でのんびり過ごした。