23時41分6秒




「お客さん、着きましたよ」


いつのまにか窓の外は、都会の景色から
街外れの公園へと変わっていた。

公園には黄色いベンチがひとつ
置かれていて、ペンキが剥げかかった
黄色いゾウの滑り台がある。

黄色いゾウが寂しそうな目で
見つめる先で、ふたつのブランコが
静かに揺れていた。


タクシーを降りた私達は、山の中へと
続く道を歩き出した。

辺りは公園があるだけで、
民家の灯りひとつ見えなかった。

目の前の大きな山にひれ伏すように
ただ草原が続くだけだった。


彼はどこへ行こうとしているの
だろうか?

この街には土地勘が無いため、
全く予想ができない。


まさか、私は殺されてしまうのでは
ないか?

彼が言っていたもうひとつのプレゼント。

それは車のライトを繋げた
ネックレスのことだったのでは?

もう既に私のことは調べあげていて、
素性や目的が明らかになったため
消されてしまうのだろうか?

殺されてしまうことへの恐怖よりも、
復讐という目的を果たせないことへの
恐怖が勝っていた。

もしこの妄想が現実になってしまったら、
私は今まで彼に、掌で転がされて
いただけになる。

そう思うと腹立だしさも感じた。


視界の隅で、ブランコがギイッと
不気味な音を立てながら弧を描く。

草原のエノコログサが山の中へと
私を誘うかのように揺れている。


「…少し怖い場所ですけど、
 大丈夫ですよ」


先をゆく彼が振り返りそう言った。

いつもと変わらない穏やかな声色が
さらに私に恐怖を植えつけた。

そしてもうどこにも逃げられないと
悟った。

彼の後ろに続き、鉛のように重い足を
引きずりながら、一歩、また一歩と
歩みを進める。

遠くから聴こえるブランコの揺れる音は、
まるで私を嘲笑っているかのように
聴こえた。