「……馴れ馴れしくすみません。
名前を尋ねるのを忘れていて、
帰り際に接客中の貴女を見たら
ネームをつけていたから…
本当によかった」
彼の言葉を聞いてホッと胸を
撫で下ろした。
話してる間、名前を尋ねるのも忘れ
ネームにも気づかず、
私との会話に集中していたのだと
思うと少し可笑しかった。
「じゃあ、行きましょうか」
「はい」
彼はレストランのドアの取手に手をかけ
ゆっくりと引いた。
さっき会った時と同じ装いの
シャツの裾から高そうな腕時計が
一瞬だけ見えた。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
彼に促されて先に中に入った。
