母の冷たい両手を握りしめながら
上着のポケットからスマホを取り出す。
気が動転してしまった私は、
スマホのパスコードを
思い出すことができなかった。
指先がじんと痛くなるほどの強さで
何度も乱暴に画面の数字を叩く。
間違える度に左右に揺れる
並んだ黒い丸に、激しく苛立ち
スマホを思いっきり壁に投げつけた。
そしてふと我に返り、スマホを拾い
緊急の文字を押して
震える声で救急車を呼んだ。
それからのことは慌しかったせいか
よく憶えていない。
心はあの時においたまま
ただ必死に目の前の出来事に
脳からの指示通りに動いた。
