「……その悩み、羨ましいです」
俯いてそう呟いた私の顔を
彼は少し困った様子で覗き込んできた。
「そうでしょうか…?」
「私の思う勇気と意味が違うのかなと。
私にとって勇気とは出すか迷う
ものではなくて、
その…常に選択肢も選ぶものというより、
突きつけられて強制されている感覚で…
どんな厳しい選択でもださざる
を得ないものだったから。
だから貴方が羨ましいです」
彼は難しい顔をして暫く考え込んでいた。
「あの…偉そうにすみません」
「いえいえ…正直、貴女のような考えの
方とはお話したことがなかったので、
とても興味深くて…
あの、急で申し訳ないのですが…
もしよければ、この後食事でも
どうですか?
もっとお話しできたらなと思って」
「えっ…?」
あまりにも急な誘いに驚いた私の目は
点になっているだろう。
「驚かせてしまってすみません。
そこまで親しいわけでもないのに
失礼ですよね…」
「い、いえ!是非…!」
正直、突然の誘いには驚いたけれど
絶好の機会だ。
逃すわけにはいかない。
これが彼の誘い方なのだろうか。
あの人と同じで、こう見えて彼にも
女にだらしない部分があるのだろうか?
様々な思いを抱きつつ私たちは
約束の時間と場所を決めて
彼は店を後にした。
