「お待たせいたしました。
当店で一番美味しい珈琲で
ございます」
御曹司の前に珈琲が置かれた。
思ったよりも長い間色んなことを
考えていたようだ。
「ありがとうございます。
頂きます」
彼はカップを持ち上げて
ひとつ細い息を吹くと
珈琲を冷まし唇へ流し込んだ。
とても美しい上品な所作で
育ちの良さがよく表れていた。
そして暫く余韻に浸ると口を開いた。
「爽やかさ、まろやかさ、苦味…
様々な味が楽しめますね」
「本日は珈琲を淹れるに当たって
様々な最高の条件が揃いました。
お客様は幸運でしたね」
高岡さんは微笑みながら言った。
その時、店内に電話の音が鳴り響いた。
「お電話ありがとうございます。
カフェMarieでございます」
高岡さんは子機を持ち話しながら
私にごめんというジェスチャーを
しながら店の奥へ入って行った。
