23時41分6秒




「お待たせいたしました。
 当店で一番美味しい珈琲で
 ございます」



御曹司の前に珈琲が置かれた。


思ったよりも長い間色んなことを
考えていたようだ。



「ありがとうございます。
 頂きます」



彼はカップを持ち上げて
ひとつ細い息を吹くと
珈琲を冷まし唇へ流し込んだ。


とても美しい上品な所作で
育ちの良さがよく表れていた。


そして暫く余韻に浸ると口を開いた。



「爽やかさ、まろやかさ、苦味…
 様々な味が楽しめますね」



「本日は珈琲を淹れるに当たって
 様々な最高の条件が揃いました。
 お客様は幸運でしたね」



高岡さんは微笑みながら言った。



その時、店内に電話の音が鳴り響いた。



「お電話ありがとうございます。
 カフェMarieでございます」



高岡さんは子機を持ち話しながら
私にごめんというジェスチャーを
しながら店の奥へ入って行った。