「マスター、私も手伝います。」
私は逃げるように高岡さんのいる
カウンターの向こうへ行こうとした。
「ありがとう。
でも、大丈夫ですよ」
そう言われてしまい渋々と
御曹司の隣に座った。
「ここで働いているのですか?」
「はい。半年程前からですが…」
「そうなんですね。
とても素敵な場所ですね」
彼の言葉に私はぎこちなく笑った。
何と話題を振ったらよいのか
わからずティーカップの取っ手を
何度も親指で撫でた。
普段はお客さんとも雑談を楽しむのに、
あまり言葉も交わさないことを
高岡さんに不自然に思われていない
だろうか…
御曹司にも不思議がられていない
だろうか…
ふたりに対する思いが頭の中を
ぐるぐると回る。
一方、彼は特に気にする素振りも見せず
店内の装飾品などを眺めている。
