23時41分6秒




「マスター、私も手伝います。」



私は逃げるように高岡さんのいる
カウンターの向こうへ行こうとした。



「ありがとう。
 でも、大丈夫ですよ」



そう言われてしまい渋々と
御曹司の隣に座った。



「ここで働いているのですか?」



「はい。半年程前からですが…」



「そうなんですね。
 とても素敵な場所ですね」



彼の言葉に私はぎこちなく笑った。



何と話題を振ったらよいのか
わからずティーカップの取っ手を
何度も親指で撫でた。


普段はお客さんとも雑談を楽しむのに、
あまり言葉も交わさないことを
高岡さんに不自然に思われていない
だろうか…


御曹司にも不思議がられていない
だろうか…


ふたりに対する思いが頭の中を
ぐるぐると回る。


一方、彼は特に気にする素振りも見せず
店内の装飾品などを眺めている。