…これは、壮大なドッキリなのではないか。
地に足のつかない感情を持て余して
1日経った今この瞬間も、夢からさめていないような気がしていた。
あの表情も、あの声色も、あの時間も
わたしは魔法にかけられていて、すべて幻だったのではないかと。
(…夢じゃ、ない…)
携帯を開く指に熱が集まる。
昨日強引に追加された連絡先に対し、顔が熱くなるのが分かった。
「菜穂もう決め……、顔赤いけど大丈夫?」
「っ、大丈夫!今2冊で迷ってるところ…」
「え、菜穂が悩むなんて珍しい」
昼休み、わたしと麗ちゃんは図書室に来ていた。
毎日の課題量に比例するかのように、図書が充実している桔梗。
文学や専門分野、歴史に関係ものは細かく種類分けされていて、世界の言語に応じた図書もそれぞれ豊富。
小説なんかは毎月タイムリーなものが入ってくるから、わたしたちを含め図書室を利用する生徒は結構いる。
図書室の洋書を読んだ感想を書く英語の課題が出たため
お弁当を早めに食べ終え、ここに足を運んだのだった。