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放課後
「神谷くん、ここが鍵かかってないって知ってたの…!?」
「え、麻見も知ってたのかよ」
「…まぁ…」
「ふはっ。知ってるヤツ少ねぇよな」
昼休みが終わった後から今まで
本当に、いつも通りの神谷くんだった。
…以前会長に呼ばれて
鍵がかかっていないことを知った数学資料室。
彼の弟である神谷くんとまた来ることになるとは、これっぽっちも思っていなかった。
「麻見」
「っ、」
「別に、言いたいこと言ってくれればいーよ」
わたしがよく知っているその笑顔。
自分から話があると言っておいて、途端に唇が重くなった緊張に俯いてしまう。
…向き合わなくちゃ。
「…、…わたしは、神谷くんの気持ちには、答えられないです」
「っ、」
「……わたしは、っ好きな人が、います…。っごめんなさい…っ!」
神谷くんに嘘はつきたくない。
…後にそれが、どんな変化を生もうとも。