10分くらい、そのままで。


彼はずっとわたしを抱き寄せて何も言わなかった。

擦る背中があまりにも優しかったから、涙が余計に溢れて。



「…っ…。もう…大丈夫。ごめんね」



ゆっくりタオルを取って神谷くんに笑顔を向ける。

…思いっきり泣いたあとだったからか、自然に笑うことが出来たと思う。



「神谷くんありがとう、…っ!」

「…ごめん。もう少しこのまま」



その腕から離れようとすると、その瞬間彼が力を強める。

背中を擦り続けてくれる手は優しいまま

耳元に降って来るその声は掠れていた。 



「…蓮、去年までサッカー部に居たんだ」



居場所を探す、子どものように。