答えを問うた菜穂に対し核心を避けた自分。
…蓮を好きで居続けたら良いと、言えない自分。
麗はそんな自らを、一方で冷酷に傍観する感情に包まれていた。
「…でもね暦、言っておきたいことがあるの」
「うん…?」
「あたしは絶対に姫里の味方なんてしない。日向は優しいから中立かもしれないけど、奏も間違いなくそうよ」
「っ!」
「蓮と暦が姫里の傍に居続けて…もしも菜穂を泣かせることがあったら。
――…その時は奏もあたしも、何があろうと姫里を拒絶する。すべてをかけて、拒絶してやるから」
色の見えないメゾソプラノは
チョコレートのわずかな甘さを殺す、無を孕む。
暗雲の先にある果てを、今はまだ誰も知らない――…。
◇◇◇