キミは当て馬、わたしはモブ。



 腕をバタバタを暴れさせながら、必死に弁明をしてきた。



「本当だって! 忘れないぞ、あの日和花を抱き締めた感触……! さらさら指通りのいい髪の毛……声を潜めて泣く愛しい妹……!」


「覚えてる理由がキモいんだよ……」


「いやぁ俺もまさかあんな理由で泣いてるとは思わんかったけど」


「あれっ、馬鹿にしてる?」


「めっそうもないです!」



 わたし、その話題に関してはかなり繊細だよ?


 わたしにとっては、すっごく大事なことだったんだから。


 お兄ちゃんからしたらクソみたいなことだったかもしれないけどさ。


 そういえば……アレも、今の内にしておこう。



「お兄ちゃん」


「はっはいっ、なんでしょう和花さん」


「……ちょっと一人にしてください」


「………………かしこまりました」



 とぼとぼと部屋を出ていく、寂しそうな背中。


 ごめんね、お兄ちゃん。また今度一緒に遊ぼうね。


 お兄ちゃんの出たドアが完全に閉まったことを確認して、ペラリ……攻略ノートの最後のページを開く。



「うっ……」



 わたしの黒歴史と目が合った。


 久しぶりに見たから余計にダメージが強い。


 楽しそうな文字の羅列と、今のわたしの心情のギャップで、身体中に寒気が駆け巡る。軽い吐き気が襲ってきて、口元を手で覆った。


 お兄ちゃんにも話せなくて、まだきちんと決別できていない危険物。


 そこに書いてあったのは――わたしの、夢と希望と、絶望が詰まったもの。



 ――――夢小説、だった。