「すまんすまん。ちょっと待ってて」
お兄ちゃんは来た道を引き返してドアを閉めると、コンコン、とノックした。
ちなみにお兄ちゃんはまだ部屋の中にいる状態である。
中からノックしたのである。
いやそれじゃあ意味ないよ……。
「和花、ただいま!」
でも、そう言ってすっごく嬉しそうな笑顔を向けられたら、ちょっと許しちゃう。
「おかえり、お兄ちゃん」
「くそ~~~! 今日も世界一可愛いな~~~俺の妹~~~~!!」
キモオタで、シスコンで、カードショップ店員のお兄ちゃん。
字面だけみたら、かなり危険な人だ。
でも、優しいし、アホだけど、面白い。
わたしも結構好きなお兄ちゃん。
「おっ、久しぶりに乙女ゲームやってるの見たな~」
お兄ちゃんが隣に座ってきて、パッケージを拾い上げる。
お兄ちゃんが使ってたからできなかったんだけど……なんて、別に言わなくていいか。
「なに!? 幼なじみキャラがいないだと!?」
「……そりゃあね」
「ん? あっ、あー! そ、そうだったそうだった……すまんすまん」
「お兄ちゃん、忘れっぽい」
「わ、忘れてないぞ!? 特にあの日のことは、絶対にな?」
……どうだか。
わたしの疑いの目に、お兄ちゃんはさらに焦っていく。



