キミは当て馬、わたしはモブ。




「い、いつの? どんな顔?」


「……覚えてねー」


「え~っ!? 嘘だっ! 教えて! 教えろ!」


「うるさい! 覚えてねーの!」



 そんなぁ……あたし、あのときどんな顔してたの? 優斗はどんな顔を見たの?


 自分の頬をこねくり回して、筋肉を動かす。


 表情って一番難しいよ。自分で見られないじゃん。



「ほら、僕の意見なんて参考にならないだろ」


「うん。でも、聞けてよかった!」



 これから表情に気を付けて優斗といれば、わかっていくかもしれないし!


 ありがとね、と笑いかけると、優斗は眉を寄せた。


 あれ!? まだ不機嫌なの終わってない!



「優斗? あたし、なんか怒らせるようなことしたんだよね? 言って! 反省します!」


「アカネが反省することはいくらでもあるけど……」


「えっ。ぜ、全部聞く!」



 この機会になるべく全部直せば、優斗の理想に近付ける。そう思ってありがたく指摘を頂戴しよう。


 まぁ、ちょっと怖いけどね……。


 優斗は軽く頭を振って否定した。


 目を伏せて、固く唇を結んでいる。その唇は、震えていた。



「……今回は、僕が反省しないといけないことだから」


「……? どういうこと? 優斗に悪いところなんてないよ?」


「いいや。僕が悪いんだ。僕は……」



 眉間のしわが深くなっていく。


 まるで何かを抑圧しているかのように、平坦な声色だった。



「――――どうせ、ただの代わりなのに」