キミは当て馬、わたしはモブ。



 振り出しに戻っただけだった。


 緊張→眠気→緊張と気持ちがジェットコースターみたいに上下している。心臓もいい加減疲れているだろう。


 帝塚くんはわたしの髪を手で()きながら、さっきよりも近くに抱き寄せてきた。


 片手は髪に、もう片手は腰辺りの位置にある。


 帝塚くんがどんな顔をしているのかは、目を閉じているからわからない。


 でも、確実に顔を接近させているのは気配で察知できていた。


 あ、これ……またキスだ……。


 思わず、まぶたの裏で眼鏡を外した帝塚くんを想像してしまった。



「……ん」



 柔らかい唇が落とされ、何度も感触を楽しむように口付けされる。


 慎重に、わたしに寄り添ってくれるような優しさ。


 徐々に体中の力が抜けていって、くたっとベッドに体重を預けていく。


 それを見計らったようにキスは深くなっていった。


 なんだかふわふわして、気持ちい……。


 湿ったものが唇をノックするので、わたしは受け入れようと口をだらしなく開こうとして……。


 ――って、



「うわあああああっ、だっ、だっ、ダメ!!」



 今までで一番力強く胸を押し、抵抗した。



「嫌でしたか。すみません……」


「ちがっ……良すぎてダメっ!」


「え、じゃあいいんじゃないんですか?」


「ダメっ! パブロフる!」


「……なんですか?」



 高級な餌ばっかり食べてたら、普通の餌が楽しめなくなるんだから!