帝塚くんは眼鏡外して拭き初め……る前に、ピタリと動作を止めた。
え? 少しだけ、口角が上がったような……?
「佐久良の指紋……」
「いやあああぁぁっ! 今すぐ拭いて! やったわたしが悪かったからぁ!」
気持ち悪い! 具体的に何がと聞かれると答えられないけど、得体の知れない気持ち悪さ!
そしてそれをなかったことのようにフラットな表情で、レンズを布で拭い始める帝塚くん。
考えてることはわかるのに、その考えに至るまでの過程が全く理解できない。
「……冗談ですよ」
「いや絶対本音入ってた。自分で始めたくせに拒絶されて傷付くな」
「はて、なんのことですかね」
本格的になかったことにし始めてるよ。
教室でこんなことして、どんどん帝塚くんのイメージが崩れていくんじゃないだろうか。
可能性を感じて周りにちらりと目線を向けてみると……
こっちを見ながらあんぐりと口を開けて顔を青くし、絶句する柊さんがいた。
盲目的に慕ってくれてた女子にまでドン引きされちゃった……。
ライバルが減ったと考えるのが正解か、こんな帝塚くんを引き出してしまったことを謝るのが正解か。
これは……なかったことにするのが正解かも。



