キミは当て馬、わたしはモブ。



 お兄ちゃんはとぼとぼと歩いて、ドアが音もなく閉まった。


 残ったスマホを拾い上げて、まだ通話中になっている画面に耳を近付ける。



「ごめん帝塚くん、お兄ちゃんが変なこと言って」


『あ、いえ。お兄さんに愛されているんですね』


「……うん。ちょっと、いやかなり、重いかな」



 普段はよく遊んでくれるし、一緒にいると安心して、楽しいお兄ちゃんなんだけどな……。


 どうにか、あのシスコンを少しでも緩和させることはできないだろうか。



『俺が勝てばいいんですよね?』


「……ん?」



 いやに真剣な声色で、帝塚くんは言い放つ。


 冗談なんて一ミリも感じられないくらいに、その声はまっすぐだった。



『そしたら、お兄さんが認めてくれるってことじゃないんですか?』


「……本気で言ってる?」


『それで佐久良に手が届くなら』


「は、はぁ?」



 うわ。なんでちょっと嬉しくなっちゃってんのわたし。


 あんなの真剣に受けとることないんだよ。お兄ちゃんだって感情で動いて適当に喚いただけだろうし。


 なのになんで、わたしはこんなに期待してるんだろうなぁ。