「お兄ちゃん、ちょっと聞いてほしいんだけど」


「なんだ和花! 一生聞いてやるぞ!」


「ちょっとって言ってるでしょ」



 ちょいちょいと手招きをし、お兄ちゃんを自分の部屋へと招き入れる。


 部屋の真ん中には、濁った色の白いプラスチックケース。


 ケースの上には四隅をガムテープで留めた紙が貼り付けてある。


 紙には『開封厳禁!』という警告文。


 これを見たお兄ちゃんも、状況を理解してひきつった笑みを浮かべている。



「の、和花? これって……」


「うん……」



 二年前、泣きながらガムテープをちぎったことを思い出す。


 この中に……みのるくんが、いる。



「また、みのるくんと会ってみようと思ってて」


「そ、それは、和花がいいならいいと思うが……大丈夫なのか?」


「大丈夫」



 だってわたしには帝塚くんがいる。


 彼への想いを正式に断ち切って、ちゃんと整理したい。


 わたしの心にははっきりとした意志が宿っていた。


 というのも……。



「好きな人と一緒にプレイするから」



 「えっ」とお兄ちゃんがフリーズした。



「……そ、その好きな人というのは、俺のことでは」


「なく」


「なく!? え、じゃあ」


「わたしが恋をしている現実の男子のことだけど」



 長い沈黙。


 大きく息を吸ったかと思えば、




「いっ、いやああああーーー!! 俺の和花がああああーーーーっっ!!」




 お兄ちゃんは頭を抱えて甲高く叫んでいた。


 うるさい。近所迷惑。