キミは当て馬、わたしはモブ。




「そうだ、これ」



 帝塚くんと廊下に出て、わたしは鞄をまさぐった。そして、ラブレターを取り出す。


 今朝奪ったまま返す機会がなくて、そのままだったんだよね。



「え、あ……はい」



 帝塚くんは複雑そうにそれを受け取って、チラリと横目でわたしを見つめてくる。



「ん、何?」


「………………………………」


「え、どうしたの?」


「……………………いえ。今じゃないですよね」



 何が?


 結局帝塚くんは何も言わないまま昇降口へ着いてしまった。


 いつもは言わなくてもいいことまで正直に話すくせに。


 せっかく楽しみにしていた放課後なのに、なんだか変な空気が流れている。


 シンとした状況の中、流れる動作で靴に手を伸ばして地面に落とすと――靴からパシャリと水が舞った。



「えっ!?」



 どういうことだ。なんで水なんかが入って……あっ、柊さんか。


 地味な嫌がらせをしてくる。後は帰るだけだし、多少の気持ち悪さは我慢できるけどね。


 帝塚くんも気付いて目を見開いている。



「佐久良、なんですかこれは……!?」


「いや、大丈夫大丈夫。家帰って新聞でも詰めるよ」



 そうして靴から水を出し、足を入れようとすると、



「だ、駄目ですっ!」



 帝塚くんに止められた。