キミは当て馬、わたしはモブ。



 柊さんの持っていたほうきを奪い、周囲を軽く掃除する。


 誰もがそれを呆然と眺めていた。


 そして、大体を終わらせるとまた柊さんの手にほうきを戻す。


 そのときには、アカネちゃんは柊さんを解放してしまっていた。



「はい、掃除代わりにやっといてあげたよ。これでいいかな?」


「ちょ、ちょっと待ってよ……!」


「なぁに?」


「……っ!」



 おかしい。笑顔を返したはずなのに、柊さんは顔を真っ青にしている。


 わたしの心は穏やかだった。波はなく、平坦で、何も感じない。


 ちゃんと柊さんの言うとおり、掃除は代わってあげたけど。まだ何か文句があるのかな。



「柊さんは、帝塚くんのどこがよかったの?」


「な、何よ急に……。そりゃあ、かっこいいところに決まってるでしょ」


「ふーん」


「その反応何!? そっちから聞いておいてっいたぁ!?」



 わたしは柊さんにでこぴんをお見舞いしておいた。


 理由はむかつくから。



「じゃあ、わたしの勝ちだね」



 口角が上がり続けるのが戻せない。


 何が。柊さんはそんな顔をしていた。


 うん、何がだろうね。



「佐久良さんって、あれだよね……。本気で怒らせちゃ一番ダメな人」



 教室の端でぬくぬくと傍観していた中村くんがぼそりと呟くのが聞こえた。


 ん? わたし、怒ってないって言ってるけどな。