「さ……」
「帝塚くん!」
彼も何かを言おうとしていた。だけどそれに被せて、わたしはずかずかと彼の方に近寄る。
そして、取り巻きの隙間から手を伸ばして腕を掴んだ。
驚いたように目を見開く帝塚くん。
今度は、わたしが彼を振り回す番だ。
「待ってよ」
手元に引き寄せようとしたとき……隣から声がかかる。
「帝塚くんは私達と話してたんだけど?」
帝塚くんの取り巻きをしていた柊さんだ。
わたしは負けじと応戦するため、人差し指を立てる。
「……い、一分だけ貸してくれない?」
「やだ」
「……三十秒!」
「三秒」
「さっ……」
さすがにそれは酷すぎやしないか。
もっと、一時間くらいから下げていくべきだったか。
「いーち」
しかもカウントダウン始めてるし!
「にーい」
もたもたしてる内にあと一秒!
しかたない、今回は一文で終わらせて……。
「さぁ――」
「帝塚くん! 今日は一緒に帰ろう!」
初めてこうやって約束を取り付けることができた。
言わないと、また柊さん達に流されそうだったもんね。
「ちぇっ」
ムスッとした表情の柊さんが舌打ちした。
な、なんとか勝ったぞ。



