復讐はやめようと決めてから初めての月曜日、SHR後すぐに雪田が寄ってきて、また何かしてくるのかと心の準備を整える。

悪口でも言ってくるかと思いきや、無言のまま横を通り過ぎ……すれ違う瞬間にはミストを吹きかけてきた。

雑巾に腐ったチーズを合わせたという表現が近い、鼻の奥にまでまとわりつく臭いだった。

「なんだこの臭い?」

「くっさ、まじくっさ!」

周囲にいた女子は大袈裟にのけ反って手を煽いだり鼻をつまみ、男子は発生源を特定しようとする。

特定されるまでそう時間は要らない。

「三河さんじゃね……」

「は、とうとう臭いまでブスになったか」

「本当女として終わってんな」

教室の窓は開け放たれ、心地よい風が入ってくる。

「三河、人前でおならするとか常識なさすぎるよ。それじゃどんだけ成績よくても就職できないよ?」

海堀が馬鹿なことを言い、どっと笑い出した五人。
一井は成績を馬鹿にされたのを根に持っているのか、そんなの馬鹿の私でもわかるのにと当て付けに言って、みんながブスっていうから自棄になったんじゃと元凶の海堀が言う。