「こんなところで勉強したってロクな大学行けないのにさ」

朝霧たちの元に戻った雪田が、拗ねたように頭の後ろで手を組んだ。

その負け惜しみの言葉に、容姿を笑われるより締め付けられた。

塾で勉強していると、この学校の進度があり得ないくらい遅いことがわかる。最初の授業で小学生の復習、今やっと高校生になった気分だ。

塾に行かなければ他の学校の生徒には到底太刀打ちできない。私が足止めを食らっている間、他の学校では勉強が進んでいることを思うと焦りで胸が締め付けられる。

「ここでどんだけ頑張ったって進学校には敵わないのに」

ここにいるのは何かの間違いだ。
あの日風邪を引かなければ沙良木と同じ学校にいた。

ここに来てやっと一位になった訳じゃない、昔からあんたたちより勉強して成績を上げてきたんだ。

同じ中学の人なら間違いなく進学校でも通用すると言ってくれる。

しかし同じ中学の人は三人くらいしか来なくて、このクラスには一人もいない。

中学時代は沙良木をいじめる人ばかりで、やっと馬鹿なやつらの少ないところに来たと思った。沙良木を庇う変なやつと思われることもないと。

しかし逃げ場ではなかった。また新しくクズたちに目をつけられただけだった。

思い返せば学校に恵まれていない。小・中学は沙良木と一緒にいるだけで避けられ、高校では些細な理由でいじめられる。

こんなクズを振り切って、目指している大学に行きたい。それでも日中はまともな授業を受けられず他の学校に差をつけられているから、放課後と休日に授業の遅れを取り戻すしかなかった。

普通なら必要のなかった苦労に追われ、大きく遠回りを強いられていることに焦りが募る。

私が望むことは、学習による達成感を感じ続ける環境、そして私の横に沙良木がいて、穏やかに過ごす日々。

それだけを頼りに生きているのに、高校受験で叶え損ない、大学受験でもまた遠ざかっていることを思い出せられて心が締め付けられた。