いじめっ子抹殺魔法〜優等生の放課後残酷魔物狩り〜

沙良木の存在は生き甲斐と言っても過言ではない。それなのに高校は別々になってしまい、一緒に過ごす時間が減ってしまった。

だからもっと話していたいけど、あまり遅くなっては心配されるから、惜しみつつ沙良木と別れ家に帰る。
お風呂に入るまでの短い時間のために着替えてから、汚れのついたシャツの始末に困った。

学校でやつらからひとまず解放されてすぐ、石鹸のついた指で擦り落としたけど、ふやけたまま残っている。

親に見つからないようこっそりと洗濯機に投げ入れて、部屋に逃げ込んだ。
何で貴重な自由時間をあいつらがしたことの後始末に費やしているんだろう。ふと冷静に考えて虚しくなった。

耐えられる。けれども厄介だし損だし、容姿という自分ではどうしようもないことでこんな不運が降り注ぐのはやるせない。

そもそも他の子にもダサいだとか暗いだとか、挙げ句の果てには三河より酷いとか言っているあたり、私に特別きつく当たるのはその時の気分としか言いようがない。

あの日海堀に目をつけられたばっかりに被害が集中している。

いじめのきっかけが、適当なもの、運という不確定要素なら、救い出してくれるきっかけも同じだったりしないのか。

ある日、いや明日にでも救いが降ってこないだろうか。


夢の中、真っ暗な空間で立ち尽くす。
寝ているときは何も感じずにいられるから好きなんだ。それなのに夢なんか見てしまったら嫌なことを思い出してしまう。寝ているときくらいそっとしていてほしいのに。

どうにかして深い眠りに戻れないかと願っていた。

「もしもし、三河」

低い声が聞こえたので顔を合わせると、目を閉じて笑う男がいた。羊に似た大きな角を生やし、細かい装飾の施された黒い木の杖を側についていた。

肌の色は暗い紫で、杖を握る手はとんがった爪が伸びていた。

どう見ても善いものではない。

「君はいつもいじめられているな」

自分の夢の中の存在だ。言い当てられても驚かない。
否定するようなことでもないので、頷くだけ頷く。

「一つ頼みごとがある。魔法を授けるから学校に潜んでいる魔物を殺してくれ。もしも全ての魔物を殺し切ったら願いを一つ叶えてやろう」

夢らしい滅茶苦茶な設定だ。
それでもずっと、意味もなく馬鹿にされ続け、ストレスがたまっていたところだ。

「わかった」

どうせやり終える前に覚める。それでも、覚めるまで楽しませてもらおう。

「魔法は夕方、逢魔時がきてから使える。頼んだぞ……」

煙のように燻ると、男は消えていった。
今は真っ暗だから使えるのかしら。魔物探しに足を進めたら、世界が白み始め……

目が覚めた。
カーテン越しの柔らかな光が目につき、朝の静けさの中でため息をつく。

期待したのに。夢の中ですら、溜め込んだストレスを逃がすことが許されないのか。
心の中は不快感で膨れ上がっている。それでもカーテンを開ければ、日光を浴びて体が軽くなるのが悲しい。