ひとまず授業の用意をしていたところに後ろから声をかけられた。女好きの高梨で、何をしてくるか分からないから身構える。

「三河さん授業が始まる前に準備しとくんだ、えらいねー」

「別に、当たり前のことだけど」

「真面目だな、雪田とかに宿題やらされて大変だろうけど頑張ってね」

「はあ……」

そんなことを言われてもどう返していいかわからない。朝霧や市井の味方をしそうな男子に言われても不審に思うだけだった。

高梨は男子のかたまりへ戻り、小さな笑い声が沸いてきた。

「話してあげたのに冷たいな」

「まあ三河さんだし仕方ないよ。きっと勉強はできても男子と話す能力がないんだ。天は二物を与えず」

「それでもブスのくせに愛想もないとか一生結婚できないパターンだな。悪いところだけ二つもつけられてやんの」

なるほど、そうやって馬鹿にするために声をかけたってこと。
時間の無駄だから最低限の返事だけ返せば愛想がない、どうせ愛想良くしても気があるとか三河さんに好かれても困るとか言うのが想像つく。

沙良木も私もそれの繰り返しだった。
鬱陶しい。