いじめっ子抹殺魔法〜優等生の放課後残酷魔物狩り〜

「ああ、美術の授業でうっかりね、絵の具と違ってじわじわ広がるのが嫌だわ……」

汚れを撫で付けながらため息をついてみせる。

「へぇ……インクを使うなんて珍しい」

「うん。でも滑らかだし筆より細い線が描けるから便利でね」

気付かれてはいけない。
沙良木は病気を治す手術代を稼ぐためにバイトをしている。それでも進学校で塾にも通っているから長時間働くことはできない。
求人サイトを探す中で一番条件が良く、すぐに電話をかけたというバイト先は、あいつらの仲間が経営しているのだ。

沙良木のことだから、本当のことを知ったら私を助けようとしてくれるだろう。でもあいつらは卑怯だから、あの男にあることないこと話してクビにさせかねない。

ピアスを両耳に複数開け、お世辞にも品がいいとは言えない男だ。
学校で朝霧があの男と電話しているところを何度も見た。電話がかかってきて、授業中ということを知りつつ止めないところから、常識がないとわかる。

沙良木は昔顔と首の傷痕が原因でいじめられていた。人権意識のかけらもないあいつらに知られれば何をされるかわからない。
いじめが高校になってやっと終わったのに、沙良木をまた苦しませるわけにはいかないのだ。

惨めでも、あんなクズたちには言わせとけばいい。沙良木が無事なら何でもいいんだ……。