三河が沙良木と一緒にいた時間、雪田たちは学校に残っていた。

部活のない日とはいえ不自然に静まり返った暗い校舎。三人はしゃべるでもなく、ただゆっくり何かを気にするように歩いていた。

三人の少し先ではネズミほどの大きさの魔物が壁に沿って走っていた。それを見つけた雪田は駆け寄って臆することなく踏みつけた。

短く悲鳴を上げ跡形もなく消える。
それを見るといつも通り口角を上げ、恐怖や罪悪感は窺えない。

踏みつけた足を上げた雪田の後ろからいつの間にか海堀が覗き込む。

「一匹?」

「うん」

答えを聞くと海堀は正面を向き、片足をぶらつかせた。

「いくら倒せば滅ぶんだろうね」

これまで強敵に遭ったことのない海堀の言い方は呑気だった。

滅ぼせば願いを叶えるという夢の後に異世界で戦っているのは同じだが、三河の戦う世界とはまた異なっていた。
ここにいるのは弱い魔物ばかりで、力をつけた魔物は三河の世界にしかいない。

ちなみに五人は三河のことを殺せない。
もしも三河を傷付ければ元の世界でも事件として扱われるし、そもそも戦力的に三河を殺すことなどできない。

敵の配分が不平等なのは魔力の差が理由だった。