いじめっ子抹殺魔法〜優等生の放課後残酷魔物狩り〜

沙良木の柔らかい髪が頬に当たる。今日は寒くないのに伝わってくる体温が心地いい。

沙良木の顔を後ろから眺めているばかりで周囲の景色にも気を留めなかった。沙良木が立ち止まってから、目的地は公園なんだと気付く。

「ありがとう」

「待っててっ……」

私を下ろした後小走りでどこかへ向かう。
申し訳ないと思いつつも、残った手の感触を思い返す。不謹慎かも知れないけど、私を背負っている時の強張った表情に心打たれた。

沙良木はそれほど時間をかけずに保冷剤をそのまま掴んで戻ってきた。
バーコードに貼られたシールから近所のドラッグストアで買ったものだとわかる。ハンカチを取り出すと見えるあざに保冷剤を当ててくれた。

「他にはない?」

「うーん、あるけど冷やすほど痛くないかな」

これは嘘で、一番痛むあざは冷やしづらいところにある。

「跡、残らないといいんだけど……こうなるのも僕のせいかな、やっぱり移るんじゃ」「そんなことない。偶然よ」

保冷剤を優しく当てる沙良木の手が強張った。私はその上にそっと手を重ねて否定する。
沙良木の長い前髪の下には傷跡がある。昔傷跡が原因でいじめられたから、容姿については人一倍気にする性格だった。

沙良木と一緒にいると傷が移りそう。
そんなことを言われて、今でも強迫観念に取り憑かれていた。

「きっとこんなのすぐに消えるわ。それにあざがあったって私が私であることには変わりない。もしも消えなくて他の人が離れていっても、沙良木がいてくれるならどうてことないわ」

現に沙良木がいるから惨めな生活でも生きていたいと思える。
自信を持って笑うと、安心したように微笑み返してくれた。