いじめっ子抹殺魔法〜優等生の放課後残酷魔物狩り〜

海堀が突如赤いペンの芯を外し、パキッという音がした。

「三河ってほんと化粧っ気ないよね」

指に絡みつき、手のひらから滴る赤いインク、それを三河の顔に擦りつけようとする。三河は当然抵抗するが、残りの三人が押さえつける。

海堀は右手で頬を強く掴み、その親指で、三河の薄く形のいい唇に線を引く。

「何を騒いでいるんだ?」

「先生っ……!」

一応、先生の目があるため三人から解放された三河は、縋るように机から身を乗り出す。

「すみません。三河さんのペンのインクが切れていたので、私の芯を貸してあげようと思ったんです。でも種類が合っていなかったみたいでインクが飛んじゃって……」

告げ口は許さないとばかりに海堀がすかさず言い訳をする。

「ごめんね三河、替え芯なんて言わず赤ペンそのまま貸してあげればよかったね」

先生から死角になるところで三河の口にインクを伝せ、口を開けば入ってくるようにした。

「そうなのか……」

「先生、突っ立ってないで雑巾持ってきてくださいよ!」

これ以上の追及から逃れるために、一井がきつい口調で言いつけ、三人が先生を教室から押し出す。早足の足音が遠ざかると、四人は封を切ったように爆笑した。

「海堀最高!」

「でしょ?三河〜先生にも見捨てられてるよ?」

「鼻血通り越して血吐いたみたいになってる。

友達から褒められ、苛立ちで顔を強張らせていた海堀は打って変わってだらしない笑顔を向ける。

他の女子は視線を三河に向けていないが、気付いていない訳でもなく、不自然に静まり返っていた。
見ていて気分が良いものではないが、止めに行く勇気はない。かつて三河の友人がやんわりと止めただけでクラスのグループから外され、一週間ほど陰口を叩かれたからだ。

男子は、好みに合わない容姿で、おまけに厳しい性格の三河を苦手に思っており、いじめられていてもどうでもよかった。
助けてこいよ、と友達をからかうことに使う始末だ。