「意外となんとかなるもんだね」
「まぁ高校生だし、一日くらい帰ってこなくても平気でしょ」
無断外泊でもした同級生の話?自分が泊まったのか、それとも友達を泊まらせたのか。そう切り出した海堀は感心した様子で笑い、それに対し遅刻常習犯の一井は平然とした様子で言い切る。
「それは一井の家だからでしょ。うちみたいに心配症だったら帰りが遅くなるだけでも大騒ぎだから」
朝霧は親が心配性と言うわりに堂々と遅刻したり人をいじめたり好き勝手しているけど……。
理解できない会話だけど特別不快になるわけでもないし、教室に入ってしまおうか。足を入れようとしたとき、朝霧が話を変える。
「でも捕まらずに済みそうでよかった。頭から落とすって今考えたらとんでもないし」
雪田が、「そうだよ気が気じゃなかったよ。あれでもまだ死んではなかったっぽいけど、結局死因は何かな?」
一井は「え、頭打ったのが後から響いてきたんじゃないの?まあ消えたんだしどうだっていいんだけど」
朝霧は「沙良木って名前だったよね?どうせ消えるんだったらもう少し殴っとけばよかったぁ。グロ顔のくせにうちらのことブスみたいに言ってきてまじムカつく」
と言ったら窪田が「いやそんなことしたら化け物爆誕だって!みんなで運ぶんだから勘弁してよ」と。
そこで一井が「あと数回くらい殴ったって一緒でしょあんな顔」
見つけた。見つけてしまった。この世界で私以外に沙良木を知っている人。
放課後の教室というありふれた光景で何の遠慮もなく繰り広げられた会話は、無断外泊なんかではなく、人を殺した話だった。
罪悪感は全く見られず、それどころか口々に沙良木を貶した。
本人の口から出たのだ、こいつらが間違いなく犯人だ。明確な死因すらわからないのは、人をいじめるときと同じように、なんとなくの気持ちで標的にして殺したのだ。
努力を惜しまずひどいいじめにも耐え必死に歩んできた沙良木の人生は、なんとなくの娯楽で使い捨てられた。
私とあいつらの記憶以外に生きた証は残らなかった。
絶望に目を向けるより先に、私は使命を確信した。
目の前にいるのは紛うことなく沙良木の仇。
人を殺しておきながら、今もこの先ものうのうと生きていこうとする。
人間とは思えないようなこいつらは、魔物と呼ぶしかない。
私が罰を与えなければならない。沙良木のことを覚えていて、魔物を殺す魔法を持つ私が。
柱の影が急速に床を侵食していき、廊下に闇が満ちようとする。待ちに待った逢魔時の中で、私は槍を伸ばした。
「まぁ高校生だし、一日くらい帰ってこなくても平気でしょ」
無断外泊でもした同級生の話?自分が泊まったのか、それとも友達を泊まらせたのか。そう切り出した海堀は感心した様子で笑い、それに対し遅刻常習犯の一井は平然とした様子で言い切る。
「それは一井の家だからでしょ。うちみたいに心配症だったら帰りが遅くなるだけでも大騒ぎだから」
朝霧は親が心配性と言うわりに堂々と遅刻したり人をいじめたり好き勝手しているけど……。
理解できない会話だけど特別不快になるわけでもないし、教室に入ってしまおうか。足を入れようとしたとき、朝霧が話を変える。
「でも捕まらずに済みそうでよかった。頭から落とすって今考えたらとんでもないし」
雪田が、「そうだよ気が気じゃなかったよ。あれでもまだ死んではなかったっぽいけど、結局死因は何かな?」
一井は「え、頭打ったのが後から響いてきたんじゃないの?まあ消えたんだしどうだっていいんだけど」
朝霧は「沙良木って名前だったよね?どうせ消えるんだったらもう少し殴っとけばよかったぁ。グロ顔のくせにうちらのことブスみたいに言ってきてまじムカつく」
と言ったら窪田が「いやそんなことしたら化け物爆誕だって!みんなで運ぶんだから勘弁してよ」と。
そこで一井が「あと数回くらい殴ったって一緒でしょあんな顔」
見つけた。見つけてしまった。この世界で私以外に沙良木を知っている人。
放課後の教室というありふれた光景で何の遠慮もなく繰り広げられた会話は、無断外泊なんかではなく、人を殺した話だった。
罪悪感は全く見られず、それどころか口々に沙良木を貶した。
本人の口から出たのだ、こいつらが間違いなく犯人だ。明確な死因すらわからないのは、人をいじめるときと同じように、なんとなくの気持ちで標的にして殺したのだ。
努力を惜しまずひどいいじめにも耐え必死に歩んできた沙良木の人生は、なんとなくの娯楽で使い捨てられた。
私とあいつらの記憶以外に生きた証は残らなかった。
絶望に目を向けるより先に、私は使命を確信した。
目の前にいるのは紛うことなく沙良木の仇。
人を殺しておきながら、今もこの先ものうのうと生きていこうとする。
人間とは思えないようなこいつらは、魔物と呼ぶしかない。
私が罰を与えなければならない。沙良木のことを覚えていて、魔物を殺す魔法を持つ私が。
柱の影が急速に床を侵食していき、廊下に闇が満ちようとする。待ちに待った逢魔時の中で、私は槍を伸ばした。



