少し汚れが気になるものの、凝ったフェンスや窓の枠がおしゃれなアパート。階段を上がりドアを二つ過ぎると、海堀とだけ記された表札が目に入る。

鍵がかかっているものだと思って差し込んでから、開けっぱなしであることに気付いた。
引き抜いてドアを開け、無言で中に入る。

「おかえり」

「ただいま」

仕事が休みなのかお母さんが出迎えてきた。それを面倒だなと思いながら、靴を揃える。

「中間テストとかなかったっけ?何かプリントもらってきてない?」

そう聞かれて体育祭があったことを思い出した。一年生の一学期に中間テストはないけど、高校では六月に体育祭があるのだ。

体育祭って確か、親が参加するかしないか書いて提出するプリントがあったよね。正直言ってそのプリントをどこに入れたかわからない。二つあるファイルのどれかに入っているか、教科書に挟まれているか。

探すのも面倒だし、整理していないのがばれると小言があるから今ここで渡すのは嫌だ。

「一年の一学期だし中間テストはない。特にプリントはもらってないな」

保護者に渡すよう言われたプリントはなかったことにして、自分の部屋に直行した。