高校では六月に入ってすぐ体育祭がある。中学校みたいに事前の練習は多くないけど、全員に看板制作などの役割を振られ、三日間は六時間目まで活動する。

体を動かすならコンタクトレンズにした方がいいかと思った。そして慣れる必要があることを考えると早めに始めた方がいい。

沙良木に今週の土曜日は空いてるか聞いてみると、空いてると返ってきた。眼科に行ってからショッピングモールで沙良木と合流し、一緒にコンタクトレンズを買いに行くことになった。

土曜日の朝は近所の眼科に行ってから、自分に合ったものを処方してもらう。待ち合わせ場所の噴水広場に行くと、白い壁を背に立つ沙良木を見つけた。

「おまたせ」

歩み寄ると沙良木が顔を上げて微笑む。
すると、やっぱりかっこよくない?と話す声が耳に入ってきた。

「なんか見られてるみたいだけど……」

心配そうに耳打ちしてくる沙良木へ、その心配を振り払うように微笑んでみせる。

「沙良木がかっこいいって話してるのよ」

「それならいいんだけど……やっぱり人目につかないところで待ち合わせすればよかったかな」

「はは……そうね、でもどのみち注目されると思うわ」

二人並んで歩き出しても、前から来る人と視線がぶつかる。同じ通路を歩いただけ。本来ならば記憶の片隅にも残らない瞬間なのに、沙良木は通る人の印象に残っていた。