ここにいるはずのない人の声。
手を下ろして声のする方を見ると、三河がこの店のバイトの男子と並んで歩いていた。

前に彼女がいるって聞いたことがあるけど、あいつの彼女が三河っていうのはほぼ確定だ。

だってあの暗い男子が付き合ってもない女子と自然に話せるなんてあり得ないし、三河だってどうでもいいやつに笑いかけたりしない。

はあ?私より先に彼氏作るって、三河あんた何様なの?

沙良木だっけ?確かに顔は整ってるっぽいけど、髪で顔隠したり接客も無愛想だし、暗いって感じ。付き合ってて何が面白いのか。

そうだ、三河をいじめるのがダメならあいつにしよう!気晴らしになってグループが元に戻るかもしれない!

何されたかは言っていいけど、私たちにやられたとは言わないように口止めしておこう。それで、言ったら三河にも酷いことするよって脅したらどうだろう。
きっと暗いやつだから泣き寝入りする。

でもバイト先で酷い目にあったって聞いたら三河悲しむだろうな。きっと自分のこと以上に悲しむだろうな。

私は誰でもいいからこのことを報告したくで、すぐさま店に戻った。