朝霧はこの店に来たらカウンター席に座り、店長につきっきり。注文が入ってこないのをいいことに話し続けている。と思ったら店長が離れた途端寂しそうに頬杖をつく。

市井は男の方に行っちゃってるし。美人だから当然男に困らないし、この間惚れさせたのとは違うやつを横に置いている。

雪田はさっき告白をOKして、上機嫌で彼氏になった大学生と腕を組んでる。見せびらかすように同じドリンクを頼み出した。

横にいる窪田に目を移すと、愛嬌があって話を上手く盛り立てるから横の男に気に入られてる。私は高校入って以来の友達だっていうのに、パッと出の男なんかと醸し出すいい雰囲気に遠慮させられていた。

朝霧、一井、雪田、窪田と友達は全員いい男を見つけているのに、私海堀ときたら全く食指が動かない。

家にいても何もいいことないし、九時までここに入り浸ることにしていた。

何事も適当が人生の方針だけど、男だけは適当にでも探す気が起きない。

彼氏いない仲間だった雪田に先越され、窪田だって時間の問題だ。帰る頃にまだいいやつ見つかってないのと聞かれることはわかっている。

それでも今いる人の誰とも付き合う様子が想像できない。

みんなはそんなつもりじゃないんだろうけど、置いてきぼりにされて退屈が限界に達した。軽食をひたすら摘む手を止め、無言でテーブルを離れる。

みんな自分のことに夢中で、席を離れた私に気付かないから心置きなく店を出た。