「駅が見えてきたし、この辺で大丈夫よ」

「そう?でも途中で変な人に声かけられないか心配だし……」

「バイト中でしょ。時間を取ってしまうのは申し訳ないわ」

「……でも三河に何かあったらきっと後悔する。いつも守られてばかりだから、三河に何かあった時助けられるようにしたい」

珍しく主張する沙良木に心を揺さぶられた。

「守られてばかりじゃない。私の心の支えよ」

前に出て言い返す私を特別視しているみたいだけど、私が私でいられるのは沙良木がいたから。

「沙良木は心の柱。柱があるから心は形を保てるし、三河 光起はこの世に存在したいと思える。一人の人間の心を構成しているのよ、沙良木は誇りに思って」

有名でもなんでもない私が偉そうに言ったことでも沙良木は喜んでくれる。

「そうか……僕が頑張ったら三河の力になれるのかな。じゃあ三河の勉強が捗るようバイト頑張ってくるね!」

何か閃いたように目を開くと、冗談っぽく言ってからふきだすように笑う。

「私のために頑張ってくれるの?ありがとう!また明日!」

「また明日ね」

私も冗談っぽく返すといつもより大きめに手を振った。
いつもならしないような気の抜けたやり取りが嬉しかった。またこんな風にふざけたいな。そう思いながら切符を買っていた。