いくらなんでも、もう一度抱きつくなんて、私にできるわけが無い。



「だ、大丈夫」


「紗知先輩、可愛かったのになぁ......うさぎみたい、いや、やっぱり天使だ」



夏樹くんは、ひとりで勝手に納得したらしい。


天使って前も言ってきたけど、どこを見てそんなこと言うんだろう。


普通の人間なのにーー。



「夏樹くん......?」


「よし、紗知先輩、帰りましょうか!」



戸惑っている私を置いて、夏樹くんは立ち上がった。


夏樹くんが来てからも、結構時間が経っているはずだ。私も早く帰りたい。


立ち上がろうと力を入れた時、忘れていた痛みが来た。



「っ!」


「紗知先輩?」



普通に立ち上がろうとしたせいで、庇うのを忘れて力を入れてしまった。


私は立ち上がることが出来ず、その場に蹲る。



「怪我してるんですか?」


「......大丈夫」


「見せてください」



そのあとの夏樹くんは素早くて、あっという間に隠していた手をどかされた。



「っ、凄い晴れてるじゃないですか!早く言ってくださいよ」