「柏木~お前黒瀬と2人で、ここ行ってきて」



6月も終わる頃、部長にそう言われて渡されたのは、新しく出来た旅館の資料だった。



「出張......ですか......」


「うん、そう。雰囲気実際に見た方がお客様にも進めやすいだろ?
それに、黒瀬も仕事に慣れてきたみたいだし何事にも経験が必要!」



たしかに、夏樹くんも1ヶ月以上たって仕事にも慣れてきていた。


経験は必要だけどーー、出張なんて、久しぶりすぎて緊張する。


なにせ、私が行ったのは研修中に先輩に着いて行った時だけ。


1人で仕事が出来るようになってからは行ったことがなかった。



「休み取っていいから、泊まってきていいぞ?
それに、この季節は流れ星が見えるかもしれないらしい」


「分かりました!行きます!」



仕事で自分達が泊まれるなんてそうそう無い。


私は、夏樹くんと2人でとか、仕事だからとか、そういうのを忘れて、了承をした。


もちろん、仕事だから経費で泊まれる。