如月さんの住んでいるアパートに着き、階段を上る。
あのキスシーンを思い出して少し嫌な気持ちになった。
ポケットから鍵を取り出し、ドアを開ける。
中に入るのを躊躇っていると、腕を掴まれて引きずり込まれた。
「…え、ぁの?」
ドアを無理やり閉めた後。
腰に手を回され、抱きすくめられた。
首に顔がうずめられ、髪があたって少しくすぐったい。
「…如月さん?」
「ごめん、しばらくこのままで」
耳元で言われ、至近距離に少しビクッとなる。
「……」
「……」
しばらくの沈黙。
でも、何か喋らなきゃなんて気持ちにはならず心地いい。
おそるおそる手を伸ばし、如月さんの首に回す。
驚いたのか少し身体が揺れて、また沈黙がおりる。
「…ごめんなさい。別れてなんて嘘です」
ゆっくり口を開く。
「怖かったんです。如月さんから別れ話をされるのが」
だから、自分から言ったら楽だろうと。
でも、あのまま如月さんが受け入れて本当に別れてたら泣きじゃくっていたと思う。
「ごめんなさい」
「…だめ」
「…え、」
即答でそう言われて、戸惑う。
「…ははっ、うそだよ」
くぐもった声で笑われ、その応えに安心した。
「…キスしていい?」
顔を上げてそう言われる。
「さっきはそんなこと聞いてませんでしたけど…?」
「…生意気」
恥ずかしくてそう返せば、ムスッとして。
でも、そっと近づいてくるから目を伏せる。
掠めるように触れて名残惜しそうに離れていったが、隙間を埋めるようにまた違う角度で触れる。
それが嬉しくて。
しばらくして離れていった唇に自分から触れた。

