ざわざわと教室に響く声。

1限目が、始まろうとしていた。

「佐々木、ノートみしてくんねぇ?」

またか。

隣の席の佐山がへらへらと頼んできた。

「別に、良いけど…」

あ、ちょっと冷たい口調になっちゃった。

大丈夫かな?

不安げに見つめ返すと、

「まじ、ありがとうな!」

と嬉しそうに、にっと笑顔を見せてきた。

眩しい。



よくやけた肌にがっちりとした筋肉、

醤油顔で、笑顔が可愛い。

あぁ、わたしの理想は塩顔なのに。

どうしてこんなにかっこよくみえるんだろう。

こんなに好きになってしまったのだろう。

最近のわたしはふわふわしている。

恋ってすごいなって思ってる。



そんなことを考えていたら、1限目なんかすぐに

終わってしまった。

「なぁなぁ、佐々木みて、」

とにやにやしながら佐山が、わたしの肩をトント

ンしてきた。指を指された方向を見ると、

中山くん(佐山の友だち)が鼻ちょうちんを膨らま

せながらいびきをかいて寝ていた。

笑ってしまった。

佐山がまた変な風に笑うから

私もつられて笑ってしまう。

佐山は

「中山、傑作だぜ」

とか言って写真を撮っていた。

中山くんも途中で「ふがっ」とかいうから

また2人で笑いあった。