「ねぇ、先生。
カラオケって良いねぇ~!
だって先生の生歌聞きながら、食べたり飲んだり出来るんだよ!
しかも、二人だけで!!」

初めてのカラオケにおおはしゃぎの桜。

俺に言わせると、こんな事に感動する?!って驚きだけど。

彼女達は、それくらい自由な時間がなかったんだと思うと。

ちょっと切なくなる。

そう言えば、夏苗ちゃんも遊ぶ時間………一時間を確保するのに………

大変だったと春人が言ってたなぁ。

決して裕福ではない、普通の家庭だったけど。

子供らしく過ごせた俺の方が、幸せだったんだと思う。

歌謡曲を知らない桜は

学校のコンクールかと笑ってしまうような歌を歌っている。

それでも、小さい頃からピアノや声楽、バイオリンを習っていた桜は

やっぱり上手くて、聞いていて心地良い。

楽しそうだ。

「また来ような。
来週は、何処に行こうか?」

次の約束が出来る幸せを噛みしめながら、カラオケを後にした。