「ちょっと無理かも…彼女のフリするなんて…うっ」


話している途中で口を手で覆われた。



「太田に聞かれたらどうするんだよ」



「だって、私には無理っ…」



指の隙間からなんとか声を出す。



「それでもやらなきゃなんないんだろ?自分のために」



自分のため…。



そう、自分のために。



湊と結婚するなんて考えられない。


そのためには早く親を説得してもらい、婚約を解消する。


私の運命の全ては湊の手中にある…。



「大人しくなった」



ククッと喉を鳴らしているのを聞いて、口を少し尖らせた。



楽しそうなのが、不服…。