そんなゆきの頭を撫でながら、
店の前で突っ立っている男の方を見る。


「すみません。ゆきが迷惑かけたみたいで。」

「あ、えっと、」

俺が声をかけると
頭を掻きながら苦笑いする男。

「ほら、ゆき。」

「ん、たのしかったです、ごちそうさまでした。」

ペコリと頭を下げるゆきに
男は俺を見て気まずそうに、ゆきに軽く手を振った。

「あー、うん、じゃあ、また会社で。」

「うん、おつかれさまでした。」



早々に帰っていった男を横目で見送り、
俺は、ゆきに声をかけた。


「俺、飲みすぎんなって言ったよね?」

「…酔ってないもん」

「あいつ絶対ゆきのこと送って
 あわよくば、そういうことをする気だったよ?」

「あいつ?小林くんのこと??そんなわけないじゃんー」

なんておかしそうに笑うゆき。
全く危機感ってものがない。

「そんなの分かんねぇだろ。」

「だって、彼氏いるって言ってるし。」

「だから何?彼氏いるって分かっててもそういうことする奴はいるんだよ。ゆきは無防備すぎる。」

「…ごめんなさい。」


怒ってる俺に気づいたのか、しゅんって落ち込むゆき。

ああ、ずるいよなぁ。
そんな顔されたらこれ以上ゆきのこと怒れない。