神奈川県にある住宅街。如月と表札の書かれた家は、朝から忙しい。

キッチンに立ち、エプロンをつけた女性が料理をしている。作っているのはベーコンエッグ。おいしそうな匂いが漂ってくる。

「お母さ〜ん!お支度できたよ〜!!」

保育園に持っていくかばんを手に小さな男の子が女性ーーー如月藍(きさらぎあい)に声をかける。藍は振り向き、微笑んだ。

「ありがとう、隼人(はやと)。じゃあ、このお皿をテーブルに持って行ってくれる?」

「は〜い!」

隼人はベーコンエッグの乗った皿を手に、ゆっくりテーブルの上に運んでいく。藍はそれを見届けた後、調理器具の片付けに取りかかった。

藍は付き合っていた如月大輔(きさらぎだいすけ)刑事と結婚し、隼人を授かった。五歳になり、よくお手伝いもしてくれる。

「ただいま」

玄関から大輔の声がし、隼人が「お父さん!!」と言いながら走っていく。藍も玄関まで向かった。

「おかえりなさい、ご飯はもうできてるわ」