決して、あやめ様が基様を見つめる視線がうらやましいので、これ以上は見ていたくないとか。

 同じように尽くしているのに、自分のことは、あんな風には見てくれないな~とか思って、いじけているわけではないんですよ。

 ええ、ほんとに~。

 今、変装して、この街並みに溶け込んでいるように。

 するっと自然に基様と入れ替わってやろうか。

 ……な~んて、思ってませんからね~。

 などと思いながら、高倉は退散することにし、犬のまま、近くにとめてある車に向かった。

 このまま車に乗ったら、また騒がれるな、と思いながら。