「……っ」
あれ、おかしいな。
なんかこう……胸のあたりがモヤッと。
モヤッとというか、ズキッと……?
今まで感じたことのない感覚に、ひとりあせっていると、何も言わずなるちかくんがまた歩き始める。
あわてて背中を追うと、すぐに駅についた。
改札、パスケースをかざして、抜けたところで。
「ほのかちゃん」
「はい……っ?」
後ろから、声。
……あれ、なるちかくんは改札入らないの?
と、のんきにそんなことを考えていられたのは、ほんの一瞬だけ。
「星祭り、一緒に行こ」
「……っ、へっ?」
「一日だけ、俺がほのかちゃんの彼氏になるし」
「は……?」
リアルに目が点になる。
呆然とするわたしに、なるちかくんは、くすっと余裕の笑み。
「恋、してみたいって言ってたから」
「……!」
そうだけど、そうじゃない!
そういうことじゃない……っ!
ぜんぜん筋がとおってないし、意味もわからない。
反論しようとしたけれど、その隙さえなかった。
「決まり、な」
じゃあ、と言ってなるちかくんはくるりと背中を向ける。
後を追おうにも、改札がジャマ。
ていうか、なるちかくん、電車通学じゃなかったの……っ?
『なるちかくんも電車通学なの?』
『そんな感じ』
後ろ姿、夕日がさして、金色がきらめいて。
わかりやすく、胸の奥、心臓がドキンと跳ねた。



