こくりと頷くと。

なるちかくんは、手のひらで前髪をくしゃりと握りつぶした。



そんな乱暴な仕草ははじめてで、息をのむ。

前髪の隙間からのぞく瞳が、悲しげに揺れている気がして、動揺した。




「……わかった。りっちゃんのとこ、行ってくる」




カタン、と音を立てて立ちあがる。

ぼんやりとその様子を見つめているうちに、金色は、きらめいて、扉の向こうへ消えた。



まるで流れ星。

みっつ数えても、きっと願いごとは叶わない。





「……これで、よかったんだよ」





せっかく、りんくんやれーちゃんは、わたしを応援してくれるって言ってくれていたのに、それは……ごめんなさい、だけど。



どっちもほんとうだったの。




なるちかくんが、大好きだから、ひとりじめしたい。

なるちかくんが、大好きだから、背中を押したい。




どっちもほんとうだった。

だから、なるちかくんにとって良い方を選んだ。


────はず、だったのに。





「……っ、ふ、ぅ……っ」





天秤は、“ひとりじめしたい” に傾いていたことを、ここにきてはじめて知った。


どうして、背中なんか、押してしまったんだろう。



今さら独りよがりな後悔が押し寄せてきて、力が抜けて、へたりこんでしまう。





「……う、ぁ」





────もうここにはいない、なるちかくんは、きちんと彼女に思いを伝えられただろうか。