【Reina's eye ケース44:たったひとつ、兄への願い】
”じゃあ、なんでこんなこと・・”
私に抱きつかれたままの日詠先生は振り返ることなく私にこう問い質した。
なんでこんなコト・・・それは私が彼に抱きついたコトだよね?
そう言われるのをなんとなく予測してたけど、いざ彼にそれを口にされると結構しんどい
でも彼に突き放されるためにもやってるコトだから
ここで折れる訳にはいかないの
自分の一大決心が揺らいでしまわないように
『先生のマネしただけだよ・・・なんてね・・・』
「・・・・・・・・」
『もし、日詠先生と私が幼い頃に生き別れることなくずっと一緒に暮らしていたら・・・こうやって兄である先生に思いっきり甘えるコトができてたのかなって思ったから・・・やってみた。』
「・・・甘えるコト・・なのか?」
今にも消えそうな声でそう呟いた日詠先生。
それが切なく聞こえるのは、多分、私の気のせいだと思う
日詠先生のことがスキだからこそ
そう聞こえただけ
『そう。でも、これからはもうこんなコトできなくなるのかなっとも思ったから・・・だからやってみたの。』
こんなことをしたのは
妹が兄に甘えてみただけ
だから、私のコト
突き放して
甘えるなよ・・・って
「・・・これからできなくなるって?」
ほんのかすかだけれど、珍しく声を荒げる彼。
『そうかもね。』
私は彼のそんな態度の変化に怯むことなく、嗚咽が上がらないように淡々とそう答えた。
彼の背中から抱きついているそのままの姿で。
「どういうコトだ?」
彼もそのままの姿で更に声を荒げた。
今までにはなかった彼のそんな声で。
そりゃそうだよね
私、今回こうなった経緯の核心をまだ彼に話してないんだから
でもそろそろ教えてあげる
せっかくの私の一大決心が揺らぐことなく、ちゃんと最後まで彼に伝えるためにも
そろそろ・・・
『・・・私ね、ずっとスキだった人にプロポーズされて・・だから入籍して一緒に暮らし始めようかと思ってるの・・・』
「・・・・・・・・・・」
微動だにせずに絶句してる彼。