【Hiei's eye カルテ41:black & white】
病院の廊下は走ってはいけない
当たり前のそのモラルが守れない今の俺。
『今日に限って、人が多い・・・』
伶菜が失神したとか聞かされて、悠長に歩いてなんかいられない。
向かう先は産科病棟から離れた場所にある処置室。
『伶菜!!!!!!!! お前、大丈夫か?福本さんから意識飛んだって聞いて』
そこにはいつもでは考えられないぐらい早く着いた。
本当なら、患者さんが休んでいる部屋のドアもそっと開けるべきだった。
いつもなら、伶菜を起こしちゃいけないと気を遣ってドアを開けるのに、そんな余裕は皆無な状態。
そんな中、ちゃんと目を開けている伶菜を見て、とりあえず安堵する。
失神したのは迷走神経反射のせいか?
顔色が蒼い
多分、貧血症状もありそうだ
さては鉄剤の服用、サボってるか?
そういえば最近、ダイエットもしてるみたいだし
『お前、ちゃんと朝飯食ったか?ミネストローネ作って置いておいたんだけど・・』
安堵した後には、彼女が失神した原因を探り、それに対するアプローチをするべきという目線が頭の中に湧き立つ。
ぽや~とした顔で、朝食をちゃんと食べていない言い訳をする伶菜に、小言を言う。
頬を押さえながら苦笑いをする伶菜。
耳を下げてしゅんとするウサギみたいな顔するとか・・はっきり言って反則。
また失神することがないように、きっちり説教しておかなきゃいけないのに・・・
『とりあえず大丈夫そうだな・・・・今日は17時に仕事あがれそうだから夕飯は任せろ。何がいい?』
反則顔を見せる伶菜に対して、俺はツメが甘くなりやすい
それを露呈した格好だ
でも、このまま引き下がるわけにはいかない
『って聴いてはみたものの、今日のメインは俺の独断でお前の苦手なレバニラな。貧血、治ってないだろ?鉄剤飲むの、サボってるみたいだしな。』
「えへっ、鉄剤、どうも苦手で。」
『飲まないと治らないぞ。だから、とりあえず今日はレバニラ。すぐに病棟に戻らなきゃいけないから俺、行くから・・・処方箋出しておくから福本さんに点滴してもらえな。』