「えー? マジ? それは嬉しいわー」

松永君はそう答えて、さっきみたいに私の肩に手を回してくる。


「っ、ごめん、やだ……っ!」

……私はつい、彼のその手を振り払ってしまった。


「あ、ご、ごめん……!」

慌てて謝ると、前を歩いていた香がこちらに振り向く。


「どうしたの?」

「あー、俺がみずほの肩に手ェ回したら嫌がられちゃって」

あはは、と松永君が笑いながらそう答えると、香は。


「ああ、多分それ、嬉しいけど恥ずかしくて照れちゃっただけじゃない? ねえ、みずほ?」


……と言ってきたのだった。

嬉しいって……。
私と松永君が気まずくならないようにそう言ってくれたのかもしれないけれど、その言い方は妙に引っかかる。

香は、そうでなくても私が男子と距離が近いことが苦手なのを知っている。
いつもの香だったら、急に触れてきた松永君を注意しそうなものなのに。

篠原君も、振り向いてこちらを見ていて、つい視線を逸らしてしまった。



「そっかー、照れ隠しなら俺も悪い気しないなー」

「そうよ。大体、みずほが照れちゃう相手なんて滅多にいないんだから。きっと、みずほにとって松永が特別なのよ」


……あまりにも勝手なことを言い始める香に、私は遂に口を開いた。



「……香っ。やっぱり二人で帰ろうっ」